茨木のり子
苦しみの日々 哀しみの日々 それはひとを少しは深くするだろう わずか5ミリくらいではあるだろうけれど さなかには心臓も凍結 息をするのさえ難しいほどだが なんとか通り抜けたとき 初めて気付く あれはみずからを養うに足る時間であったと 少しずつ 少しずつ深くなってゆけば やがては解るようになるだろう 人の痛みも 柘榴のような傷口も わかったとてどうなるものでもないけれど (わからないよりはいいだろう) 苦しみに負けて 哀しみにひしがれて とげとげのサボテンと化してしまうのは ごめんである 受けとめるしかない 折々の小さな刺や 病でさえも はしゃぎや 浮かれのなかには 自己省察の要素は皆無なのだから フジ子・ヘミング 「我が心のパリ」より
雨の日が好き。白い花、特に百合が好き。 好きな時間は午後4時。 夕陽が差してきて、それすっと消えるのがいい。 何歳になっても、夢に向かえばいい。 遅すぎることはないと思っているわ。 やるぞと決めたときからがスタートなのよ。 欲ばらず、今よりもちょっと良くなればいいじゃない。 私の実父は、青森の出身であると数年前に知った。
だからという訳ではないが、いつか青森の地に訪れようと抱いていた。 それが実現したのは、2009年3月11日。 あの日は、猛吹雪だった。厳しい青森だった。 真っ白な光景から訊こえてくる白鳥の声。 白鳥はなぜ厳しい寒さを追い求めるのか。 ...時が経ち私は30代半ばを迎えた。 体力と少しの気力で苦難をかわしてきた20代。 しかし、生まれいずる悩みは変わらない。 ごまかして、見失って、もがき苦しむ魂は、 30代を迎え、体力だけでは修まらなくなってしまった。 悲しみを哭く(なく)と表現した棟方志功。 その域に達しなければわからないことが在るのだと思う。 人生は、哭かなければいけないのだ。 哭いて、哭いて、哭いて… 厳しい寒さの中で咲く椿に逢いたい、哭泣の許で。 生きる
谷川俊太郎 生きているということ いま生きているということ それはのどがかわくということ 木漏れ日がまぶしいということ ふっと或るメロディを思い出すということ くしゃみをすること あなたと手をつなぐこと 生きているということ いま生きているということ それはミニスカート それはプラネタリウム それはヨハン・シュトラウス それはピカソ それはアルプス すべての美しいものに出会うということ そして かくされた悪を注意深くこばむこと 生きているということ いま生きているということ 泣けるということ 笑えるということ 怒れるということ 自由ということ 生きているということ いま生きているということ いま遠くで犬が吠えるということ いま地球が廻っているということ いまどこかで産声があがるということ いまどこかで兵士が傷つくということ いまぶらんこがゆれているということ いまいまがすぎてゆくこと 生きているということ いま生きてるということ 鳥ははばたくということ 海はとどろくということ かたつむりははうということ 人は愛するということ あなたの手のぬくみ いのちということ
最近、鏡の前で自分に向かって笑顔になってみる。
少し恥ずかしいけれど、これを習慣にしてみる。 いつの間にか心からの笑顔になれたらと想ふ。 その先は、神様にお任せする。 ![]() 和楽という雑誌で「躙口」の美しさを知ってから、 2010年のテーマにした。 同年9月、札幌三越での細川護熙展。 新聞の広告で知り、思い立って行ってみると、 創作の現場を再現したという不東庵が展示されていた。 その「躙口」の前に佇んだ。 「にじる」というのは両拳をついて膝で進むような動き方のこと、 躙口を通る時には文字通りそのような格好になる。 外のけがれを躙口を通ることで落とす、 地位・身分の高い人でも頭を下げさせる、 という目的で千利休が考案したもの。 精神を突き詰めての「躙口」ではないだろうか。 ようやく入り口に立つことができたなと。 その一瞬、オモッタ。 2011年は「躙口」の中での出来事がはじまる。 テーマは、手刀。 手には、いろいろな可能性があるものだ。 手を使って、いろいろなことをしよう。 手刀
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